リハビリ教育のネタ
プロローグ
このコーナーを開設するにあたって、ここに至った経緯をご参考までに。ご存知の方や関心のない方は、このページは
素っ飛ばして、コラム欄に進んで戴いて結構である。
全国私立リハビリテーション学校連絡協議会では、運営幹事会の中に「学術情報委員会」なるものを組織している。この
委員会では、将来的にはリハビリテーション学校で使用できる教科書や参考書など図書を選定して推薦し、ゆくゆくは独自
の出版まで考えている。だが、こちらが待っていても協議会のお墨付きが欲しいなどという御仁はなかなか現れないであろ
うから、これでは幽霊委員会になってしまう。そこで、とりあえずは学生の教育や教員の資質向上、あるいは学校運営に役
立つ出版物や教育補助用具の紹介から始めることにした。
まずは3名の学術情報委員でスタートするが、すぐにネタがつきそうである。皆さんからの意見や記事を、E-mailアドレス
yamamoto@kochireha.ac.jpまで、どしどしお寄せ戴きたい。
『リハビリ教育のネタ』:その1.―法を知る本―
「看護婦・保健婦・助産婦」の名称が「看護師・保健師・助産師」に変わったことは、マスコミでも取り上げられたから
周知のところである。「婦」は女性を、「士」は男性を表すことから、「師」が選ばれたようである。理学療法士・作業療
法士・言語聴覚士も「師」にしようとの意見もあったと聞いているが、今回は見送られた。
この資格名称変更についての法の扱いに比べて、ニュースに取り上げられることもなく変わったのが医療従事者資格の欠
格事由である。栄養士法などで一足先に欠格事由が変更されたときには話題になったが、平成14年から医師法をはじめ理学
療法士及び作業療法士法・言語聴覚士法についての条文が書き換えられて、それぞれの資格についての欠格事由のワクがは
ずされた。理学療法士・作業療法士では「精神病者」が、言語聴覚士では絶対的欠格事由が削除された。このことは、『健
康政策六法 平成14年版』(医療法制研究会 2002中央法規 ¥5880)で確認されたい。
法令等、普段、ほとんど目にする必要も感じないが、教育に携わり医療や福祉に関係する者にとって基本になる「六法」
は教員室の書棚に備えたいものである。教育に関する法令集では、『解説
教育六法2002 平成14年版』(教育六法編集
委員会 2002三省堂 ¥2625)だけは置きたいが、協議会の会員として『私学必携 第11次改訂』(私学法令研究室 20
01第一法規出版 ¥5460)も加えたい。
会員学校のほとんどの教員は、教育学部を卒業したわけでもなく、現在の高等教育がどのようにして形づくられたか知らな
いだろう。失礼ながら、授業「単位」でさえ、講義と実習での単位数の違いの意味を知っていないのではないかと思う。そん
な教員には、『大学教育1945〜1999 ―新制大学一元化から21世紀の「大学像」へ―』(大崎
仁 1999有斐閣 ¥24
00)を一読してもらいたいものだ。これで、教育関係法令の理解もぐんと深まること、請け合いである。
(茂野 史利)
『リハビリ教育のネタ』:その2.―「英語」の教本―
理学療法学科と作業療法学科では、新カリキュラムとなり授業科目の大綱化が実施された。これにより一般教養の
分野別のワクが無くなり、そのシバリは基礎分野として一つになったのだ。ゆえに、学生の英語離れが進むいま、必
ずしも『語学』の単位を設ける必要は無い。とは言え、英語は必要と考えて、どの学校でもたとえ1単位であっても、
科目『英語』を必修としていると思う。そこで困るのが、英語の授業の教本だ。
医師やPT・OT・STが講座をうけもつ学校では、医学的論文や医学のエッセイを教材に使用したり医学用語の学習を中心
にしたり、だと思う。また、一般教養部門の講師が担当している授業では、医学分野の専門とは関係が無く短編小説や
新聞記事などを教材にしてことが多いだろう。しかし学生からすると、たいてい、英語の授業は入学早々から始まるも
のが相場で、いきなりの専門用語では面食らうし、文学小説では興味が失せる。そこで、医学を取り上げながらも専門
的過ぎないものとして、『医療技術者のための医学英語入門』(清水雅子 1991 講談社サイエンティフィク \2718)
が使えそうである。著者は医学には素人らしく、初刷では「ギプス」を「ギブス」と書いてあった。この件については、
小生、編集部に指摘の葉書を出したのだが、ナシノツブテ。いまは改訂されているかも知れないが、未確認である。この
ような不満もあるが、一般教養の講師の先生でもこれを使っての授業は可能だろう。医学系の出版社からは多くの教本が
発刊されているが、看護本を多く出版している講談社にも英語教本がこの他に数冊ある。一見されることを、お勧めする。
英語授業の副本として使え、特に先生受けすると思われるのが、『これであなたも医療英語の達人! 脳をくすぐる
チャット集』(飯田恭子 2001 パブリックヘルスリサーチセンターストレス科学研究所 \1800)である。著者は、
医療英語の専門家で東京都保健科学大学教授だそうで、http://www.jah.ne.jp/~phrc/book.htmlから購入できる。
学生の英語嫌いを加速させないため、教本選びにも気を遣う。
(茂野 史利)
『リハビリ教育のネタ』:その3.―日本語について考える本―
「その2」では英語をとりあげたから、「その3」は日本語についてである。
最近、本屋に行くと「日本語」に関する本がいやに目に付く。ここ1~2年の間に、なぜか、急に増えているのだ。一時の
流行か、日本語が大きく変化しつつあるのか、外国語の氾濫からの危機感で日本語を見直そうという気風が生まれている
のか、その理由は不明である。STの方々はこの現象をどのように見ているのであろうか。言語療法に影響があるのだろうか。
いささか気にはなる。
この日本語、どこから来たのだろう。中国系、東南アジア系、時にはアラブ系に見える人など、日本人ほど種々の顔をした
民族はないといわれ、日本人の起源は不明である。言葉も、日本語は動詞が文章の最後にくるという韓国語との共通点はあ
るが、韓国語に無い濁音をもっているなど韓国語から派生したものでもない。生まれは、いまだ不明である。日本語の起源
は南インドで東南アジアを経て日本に伝わったとするのが『日本語の起源 新装版』(大野晋 1994 岩波新書 \780)
である。そして、この大野説はデタラメとするのが『新説!日本人と日本語の起源』(安本美典 2000 宝島社新書 \700)
である。この論争はなかなか面白いが、南インドの民族衣装が日本の神主の衣に似ているなど言葉以外の共通点も考えると、
大野説もあながち嘘で無いように思えてくる。インドが起源とすると、北インドからヨーロッパの言葉が、南インドから東
アジアの言葉が起こったことになり、インドは世界の言葉の発祥地といえるわけで、これも興味深い。日本語が生まれてから、
新語が生まれるなど「ことば」そのものの変化だけでなく、時代とともに発音も変化してきたことは『日本語はいかにして
成立したか』(大野晋 2002 中央公論新社 \914)で知ることができる。
高知県では「じ」と「ぢ」の発音の区別が残っている、和歌山県などでは「ざ行」が「だ行」の発音になる、東北地方では
「ずうずう弁」というふうに、地方によっても発音の変化(進化?)がある。小生は素人ゆえに、こうしてみていくと「こ
とば」も面白いとの思いは今が絶頂である。STの授業の言語学ではどこまで教授しているのかなど、どなたでもメールで情報
を学術情報委員会まで送って欲しい。
(茂野 史利)
『リハビリ教育のネタ』:その4.―図書室を考える―
一昔前のある養成校では図書室はあるが、常時施錠され、閉ざされていたということがあったそうである。このようなこと
は、今現在ないとは思うが、養成校の教員および経営者の取り組みようによって図書室(館)に期待する内容は様々ではない
かと想像する。いわゆる専門学校の図書室(館)に対する位置づけがどうあるべきか検討してみてはどうか。
公共図書館を対象とした図書館法、小、中、高等学校を対象とした学校図書館法、大学図書館に対する基準を表した大学設
置基準の第38条と、学校に限らずわが国にある多くの図書館は何らかの規定を与えられ、規制を受けているものと考えること
ができる。専門学校の図書室(館)はどうしたらよいのだろうか。一つの切り口として館種による分類に当てはめて考えてみ
てはどうかと提案する。
リハビリテーションに関する教育が中心という位置づけは了解の得られるところであるので、医療系の専門図書館あるいは
準専門図書館ではどうだろう。
運営に役立つ図書に、『専門図書館経営論−情報と企業の視点から−』(山崎久道 1999 日外アソシエーツ;紀伊国
屋書店 \2,800)、『図書館員選書 専門図書館のマネジメント』(豊田恭子 2000 日本図書館協会 \2,000)がある。
(池田 利章)
『リハビリ教育のネタ』その5.―「物理」を学ぶホームページ―
いまごろの学生の学力は本当に低下しているのか。たぶん思考能力は低い。このことは『分数ができない大学生』(岡部恒治
他編 1999 東洋経済新報社 ¥1600)で皆が確信するところとなった。最近に行った小生のテストで、例えばの計算で
「2+3×4=20」と答えたリハ学校の学生がいて驚いた。もちろん正解は「14」で、小学校3年生ころに習う計算である。
専門科目の学習に数学は関係ないと思われるかもしれないが、テレビでは織田無道氏と激論を交わしている大槻教授も『「文科系」
が国を滅ぼす』(大槻義彦 1998 ベストセラーズ¥1300)でいっているように、数学は物事の思考の基盤である。やはりこの
ような学生に授業をすることを思うと考え込んでしまう。
数学と同じく、リハ学校で学生に教授するのに困るのが、入学前の理科系科目の履修経験である。高等学校での科目選択制、そして
最近は少なくなっているが小学校での女子教員担任学級の理科授業が問題化してくる。特に「物理」となると、ほとんどの学生が高等
学校で選択履修をしていなく、そのためもあって苦手意識が非常に強い。特にPTでは、力学や電気理論が必要になるため、基礎科目に
「物理学」を必修としている学校も多いと思う。このとき、専門科目での内容を含み、わかりやすい教本が好ましい。これには、
『改訂・看護技術の物理学的考察』(平田雅子・松本光子 1990 メディカルフレンド社 ¥2330)、『生活のなかの物理』
(藤城敏幸 1996 東京教育社 ¥1880)などがある。
これも最近の驚きの経験であるが、電気は“+と−をつながないと電流が流れない”ことを知っていない学生がいた。こうなると、
「物理療法」で物理学理論を如何に易しく教えるかというのも、悩みである。そこで使えるのがインターネットである。愛知医科大学
物理学教室のホームページhttp://www2.aichi-med-u.ac.jp/physics/database.htmもよくできているが、鹿児島大学 物理科学科
古川一男 先生 のホームページ「生活の中の物理」http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~furukawa/seikatu/index.htmがすごい。
リンクできるアドレスを目一杯載せていて、「物理」についてのたくさんのホームページを知ることができる。すぐにもクリックして、
一度覗いて見られたし。
(茂野 史利)