『リハビリ教育のネタ』:その38.―アメリカ商工会議所―

 

4月に診療報酬の改定が行われ、リハビリテーション業界には激震が走った。医療機関の収益への影響が明らかにされるのは半期後であろうが、規模の大きい病院では微増収ながらも診療所規模では大幅な減収が予測されると言われている。すでに、3月時点で新卒者の内定取り消しがでたとも聞いているし、PTOTSTを養成している学校の集まりである本協議会としても、今後の予測を誤ることなく対応していかねばならない。現状は,世の中の不況を尻目に売り手市場と規制緩和が重なって、養成校は急増し、計画的需給バランスは無視して卒業者を輩出するようになっていて、この拡大傾向はまだ12年は続くと予想される。しかし、診療報酬の引き下げはボディブローのごとく効いてきて、求人は激減すると思われる。これまでのPTOTSTの需給予測では、患者や対象者数および人口比から算出されたものが多く、求人傾向を加味しても、充足の域に達してきたと言われていた。だがここにきて気がつけば、不思議なことではあるが、誰も需要に最も影響する診療報酬を基本にPTOTSTの需給予測をしてこなかったことが落とし穴である。もっとも、これはある程度は予測されていたことでもある。必要性が叫ばれながらも充実していない療法については先ずは診療報酬点数を高く設定し、普及が図れれば一挙に点数を下げる。これは常套手段であり、例えば近いところでは、人工透析で多くの病院が痛い目にあった。リハビリテーションも普及したから、もうこの辺で打ち止めという表明である。診療報酬がどのように決まるかは、表面的には医療の値段結城 康博 2006 岩波新書 ¥735)に書かれているようなことであっても、裏には政策的意図が大きく働いていることは勿論である。こうなると本協議界のみでの対応は無理で、PT協会・OT協会・ST協会などと共同出資してでも、早急に『シンクタンク』機関を持つ必要がある。

グローバル化とか規制緩和とかの名目で、アメリカからの圧力に屈した政策があらゆる業界で採られているが、医療業界も例外ではない。いかにアメリカからの圧力が大きく日本が言いなりであるかは『拒否できない日本』関岡 英之 2004 文春新書 ¥735)にあるが、医療業界のこの例に漏れないことは患者見殺し医療改革のペテン崎谷博征 2004  光文社 ¥1,000にある。露骨な例は、昨年度に騒がれた混合診療である。村上ファイナンス事件では資金源の一人とされるオリックスの宮内氏の名前も、混合診療推進派としてしきりに登場した。患者見殺し医療改革のペテンの中でも触れられているが、宮内氏が深くかかわり、混合診療開始を当てに建設して昨年開院したのが、高知の県立病院と市民病院が合併しての高知医療センターである。これがあって、高知県の医師会は混合診療反対で大いに盛り上がった。しかし、混合医療の制度上の実施は先送りとなり、高知の全県民をオリックスの疾病保険に加入させて優先的に自費診療するという目論見は外れた。送り込まれていた病院長の瀬戸山氏は退職し、負債が高知県民に重く圧し掛かることを県民が知っても、後の祭りである。

 政策を含めた分析を行い、5年先・10年作を見据えての対策が必要だ。

(茂野史利)

 

 

 

『リハビリ教育のネタ』:その39.―自己点検評価にもアメリカの匂い―

 

このコーナー その31で平成17年度定期総会のことを載せから、早くも1年が経った。この1年、あまりこのコーナーの回を重ねていないことは‘ちょっと反省’である。

平成17年度定期総会では、質問で「大卒者は4年制専門学校の2年次へ編入できないのか」「それぞれの学校での自己点検評価の実施状況」「臨床実習についてのありかた」の質問があった。

同種の科に在籍していての転入学では問題ない。また、年度始めに2年次で欠員が生じて編入生を募っての、入学でなく編入では、カリキュラム上で単位の取得上に支障がなければ、あまり問題ない。しかし、他の入学生と同様にして入学手続きを経て入学した後に、飛び級のかたちで2年次生に入学させるのは問題がありそうだ。

自己点検評価については、その29.その35でも触れたが、これに頼り切ってしまって技術空洞 VAIO開発現場で見たソニーの凋落宮崎琢磨 2006 光文社 ¥1,000)のような状況に陥ってしまわないように注意しなければならない。自己点検評価手法はアメリカからの導入であるが、政府からのお達しには何やらその38で書いた圧力を感じる。大学では義務化されているものの、専修学校では努力目標となっていることでもあるし、『なんとなく,日本人』(小笠原泰 2006 PHP 新書 ¥756)にあるように日本人なりの考え方があるはずで、日本に合ったかたちでおこなうべきだ。

(茂野史利)